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つれづれ草―「友の会だより」No.108号より―

つれづれ草―「友の会だより」No.108号より―
 ぼんやりして何もしたくないときは、なぜか「徒然草」を手にします。理由は判りません。ただ兼好法師の文章を読むと気が安らぐのです。兼好の生没ははっきりしませんが、記録によれば弘安六年(一二八三)に生まれ観応元年(一三五〇)四月八日、六八歳で死亡とあります。「つれづれ草」の著作は鎌倉時代の末期、四八、九歳のころと思われます。
 最初にこれを読んだ若いころは、書かれていることに戸惑いを感じたものです。
 例えば「よき友は物を呉れる人」とあると、あまりにも現実的すぎて興ざめしたものです。
 また「命長ければ辱多し。長くとも、四十にたらぬほどにて死ぬのが無難であろう」(七段)と述べながら、ご自分は六十八才の長寿を全うされた。矛盾していると言えば矛盾していますが、人生は矛盾だらけでこれも現実です。
 つれづれ草はその一段一段がいかにも断片的で、何のまとまりもないようにみえますが、「人間はいかに生きるべきか」という作者の願望がよく理解できます。人生経験ゆたかで、ある程度の年齢になると、この随筆のおもしろさが倍増します。
 「すべて何も皆、ことのととのほりたるはあしき事なり。しのこしたるを、さて打ち置きたるは、面白く生き延ぶるわざなり」(八二段)とあるのは、ものごとは完成したものよりも未完成の美しさを強調しながら、残りの夢を持つことが面白い生き方としています。

 論語(李氏)に「益者三楽、損者三楽。礼楽を節するを楽しみ、人の善を道うを楽しみ、賢友多きを楽しむは益なり。驕を楽しみ、佚遊を楽しみ、宴楽を楽しむは損なり」とありますが、つれづれ草は具体的に述べています。

 「友とするにわろき者、七つあり。一つには高くやん事なき人。二つには若き人。三つには、病なく身強き人。四つには酒を好む人。五つには、たけく勇める兵。六つには虚言する人、七つには欲ふかき人。よき友三つあり。一つには物くるる友。二つには医師。三つには智恵ある友」(百十七段)。

 老人になると、若い人や病気をしたことのない頑丈な人は付き添いなら良いとしても、一緒に行動することはちょっと無理です。相手も困るし、合わせればこちらが参ります。お酒も一合か二合なら付き合い程度で楽しいが、それ以上は御免こうむりたい。これは健康で長生きをする秘訣かもしれません。

 第十二段には友情の機微があります。
 「もし同じ心の人があって、そういう人としんみり話しあって、面白いことも、ちょっとした世間話も、かくすことなく言って慰め合うのこそ嬉しいだろうに、そういう人はあるまいから、少しもくい違いがないようにと向かい合っていたならば、かえって一人ぼっちの気持ちがするだろう」
―「友の会だより」No.108号より抜粋―