Interview Corner

シャボン玉石けん株式会社 代表取締役社長 森田隼人× 食品ジャーナリスト 安部司さん

食べる、着る・・・・。暮らしは選択の積み重ね。日々の小さな選択こそが未来につながる。

食品ジャーナリスト

安部 司さん

福岡県出身、山口大学文理学部化学科卒。
総合商社食品課退職後、無添加食品開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わる。熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権食品製造特許4件取得。

[著書紹介]
食品の裏側/食品の裏側2 実態編
「食品の裏側」は初版以来65万部売れたベストセラー。消費者が知らない“食品製造の舞台裏”を、食品添加物の元トップセールスマンである安部司さんが明かします。自分の口に入る食品はどうできているのか。添加物の「毒性よりも怖いもの」とは何か。安さ、便利さの代わりに何を失っているのか。それらを考えるきっかけとなる一冊です。「2」では「食品の裏側」発刊以降、食品をめぐる環境の深刻化、原発問題など、食に関する問題をさらに深く考えていきます。

森田 著書『食品の裏側』で、〈安さ、便利さの代わりに、私たちは何を失っているのか〉、〈廃棄寸前のクズ肉も 種類の「白い粉」でミートボールに蘇る〉など、われわれの暮らしに警鐘を鳴らされています。弊社の工場を見学していただきましたが、まずは製造工程など見聞豊富な先生からご意見をお聞かせいただけますか。

安部 先代の時から存じ上げていますが、先ほど工場を見学し、改めて当たり前のことをきちんと行っている会社だと思いました。私も無添加の加工食品を作ろうと苦労した経験があるのでわかります、無添加でかつ美味しくするには職人の技術が必要なことを。技術があってこそ美味しい有機野菜や無添加のお醤油ができます。あの釜炊き職人さんや伝統的な技術・製造工程だからこそ無添加で高品質の石けんができているんだと。

森田 もっと簡単に、大量生産する方法はいくらでもあります。しかし、無添加の石けんでかつ品質を保つため、昔ながらの手間ひまかけた、釜炊き職人が五感を駆使した作り方にこだわっています。

安部 ただ気になったのは、サイズの規格が合わない製品を外す仕組みの成形ライン。それは工業製品的な概念であって、シャボン玉石けんは工業的・化学物質的な製品づくりとは異なるわけですから、何ミリ違おうが許されるべきではないかと。そして、その概念は消費者側の意識に根拠を置いていると考えると、消費者意識自体をみんなで考えたいと思いましたね。

森田 弊社の場合、サイズ違いのものは再度練り直すことで再利用します。製造工程、職場環境など、よき伝統は継続し、改良すべきは常に進化させて持続可能な社会を支えることができる製品づくりでありたいと思っています。ところで、安部先生は最近「ひふみの原則」を提唱されていますね。

安部 安心安全なものは何か?ネットや書物から情報を得て、覚えようとするやり方は挫折します。添加物は今や4千5百品目は優に超えていますし、こむずかしいカタカナですしね。ひ=「非伝統的なものは食べない」、ふ=「不自然な物は食べない」、み=「未経験なものは食べない」〜ひ・ふ・み。もっとシンプルに言ってしまえば「裏書きを見て台所にないものは不自然なもの」ということです。

森田 知らないものは口にしない、使わない。非常にわかりやすいですね。われわれもあらゆる機会でお伝えしていることの一つに、石けんに限らず、製品の裏書きを見て、主成分は何か、何が含まれているのかなどを確認することをおすすめしています。安心・安全志向の高まりは感じるのですが、選択・購買にはなかなか結びつかないのが現実です。中味よりもCMなどのイメージが優先されています。

安部 手に取ったらくるっと裏返す「手首の運動」で裏書きを見て選択する。その選択の積み重ねが未来につながっているのです。次世代に何を残していくのか。処理に苦労するような添加物・化学物質……この選択は、次世代に負の遺産、リスクを負わせているのではないかという観点が大事だと思います。これらを使い続けることで、どう影響があるのか……添加物の影響など、まだ解明されてないようなものですから。

森田 食品も洗浄剤も、一部の添加物は「乳化剤」「調味料」「香料」などと複数の物質を一括表示できたり、安全と言われているものでも後から有害性が分かったりすることもあります。子どもたちにとって、親や大人が選択する商品や暮らし、環境が全てなので、このようなことを知った上で選択してほしいですね。

安部 完璧な無添加主義を提議しているわけではなく、化学物質にはすべてメリットとリスクがあり、それを知った上で優先順位をつけて選択する姿勢が大事だということをお伝えしたいのです。安い、簡単・便利で魅力的な食品ほど大量に添加物・化学物質が含まれている、その得体の知れない物質を自分の家族や子どもに食べさせる、使わせることが果たして本当のメリットなのか。そういう問いかけを自分自身にも、そしてみなさんと共有することが、自分の使命であり、義務と思って、日々講演をさせてもらっています。

森田 メリットとリスクを知ることは今の情報社会の中でより一層大事なことですね。選択されないものは淘汰されます。今後も選択される製品づくりを行ってまいります。今日は本当にありがとうございました。

閉じる