企業インタビュー

コトリコーヒー

コトリコーヒーは自然豊かで空気がきれいな栃木県の「那須まちづくり広場」に、2022年8月にオープンした小さなお店です。北海道産小麦を使った無添加の天然酵母パンと、生産履歴が明確なスペシャルティコーヒー豆を直火釜で焙煎して販売しています。

コトリコーヒー

実は2019年12月までの6年半、夫婦の故郷である宮城県多賀城市にお店を構えていました。そこではランチメニューも提供し、多くのお客様にご来店いただいていましたがやむなく閉店し、今の「那須まちづくり広場」に移転しました。
大切なお店を閉めざるをえなくなった理由は人工的で過剰な香りによる「香害」です。

2018年の夏ごろ、まず夫である私がカフェでの接客中に突然、発症しました。お客様のある特定の香りによって具合が悪くなるのですが、当初はその原因がよく分かりませんでした。人工的な香りにふれると、全身が痛くなり、激しい頭痛、咳、吐き気などに襲われます。まだ発症していなかった妻は、最初はそんなに深刻とは思っていなかったようです。ところが数か月後に妻も発症し、夫婦での“闘い”が始まりました。

自分たちの生活の見直しも必要でした。合成洗剤で洗っていた服を全部捨て、家の中もくまなく掃除をしたのですが、見えないところの埃にまで香りはしみついていたようです。
お店ではメニューのクオリティーを保ちたいという思いもあり、人工的な香りをまとっての来店は控えてほしいと、店内での掲示やSNSなどで発信を続けました。

閉店のお知らせ

医師から「化学物質過敏症」の診断を受けた私たちにとってそれは切実なお願いでした。理解してくださる方がいる一方で、「体質の問題では?」「薬を飲んだら?」と私たち自身の問題として、「めんどくさい店」とも言われるようになり、心が折れそうになることもしばしばでした。多くの方が来店されるなか、香りによる不調が悪化し、頭がボーッとしてお皿を落としたり、注文を忘れたりと営業もままならなくなりました。

閉店を決意したのは、SNSでの匿名での攻撃と終わりのないやりとりにも疲れ果て、自分たちの心も危ないと思ったからです。まるで子どもを手放すような苦しさと悲しさでした。
ご縁があって、日本で初めて「フレグランスフリー宣言」をした「那須まちづくり広場」にお店を開くことができました。香害を伝える活動にも引き続き取り組んでいます。香害について発信をする際は、何度も何度も自分の文章を読み返して、相手の立場に立てているかどうかを確認するよう心がけています。

前のお店でも行っていた、化学物質過敏症や香害に悩む人たちが安心して集える場「カナリアカフェ」を開催し、そこでみなさんの笑顔を見るのが楽しみでもあります。「唯一、自分が化学物質過敏症であることを忘れられる」と言ってもらえたことが嬉しかったです。
まだまだ道半ばではありますが、化学物質過敏症を発症したみなさんと、そしてゆくゆくは自治体などとも一緒に協力しながら、化学物質過敏症の方にとって安心安全な環境づくりを目指して活動していきたいと思っています。
シャボン玉石けんさんの「香害」への意見広告を見たとき、「私たちもこれが言いたかったんだ!」と、広く周知していただきありがたかったですね。この「香害啓発マーク」は伝わりやすくて、発信を続けてきた身として、なるほどと思いました。

お店での香害啓発マーク

行き過ぎた香りブームに乗った合成洗剤や柔軟剤などの香料は本当に必要なのか、一度立ち止まって考えみてほしいのです。
そして、香害や化学物質過敏症について誰にも言えず苦しんでいる人、特にこれからの未来を生きる若い方には、「1人じゃないよ。大丈夫だよ」と伝えていきたいです。

コトリコーヒー

コトリコーヒー

栃木県那須郡那須町豊原丙1340
(旧朝日小学校)

那須まちづくり広場103 ※金土日の営業

TEL: 080-3195-2048

https://www.instagram.com/kotori_coffee/

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