コラム

未来のために、今わたしたちができること 〜香害・化学物質過敏症について考える〜
2024/01/01
Natural & Simple life

未来のために、今わたしたちができること
〜香害・化学物質過敏症について考える〜

集合写真 名前

藤井千晶さん 渡辺一彦さん



-森田

渡辺先生、藤井代表、先程は〈香害・化学物質過敏症〉啓発講演会にご登壇いただきありがとうございました。当社が〈香害〉の過酷な現状を知ったのは、2018年、札幌の小学生から届いた手紙でした。ここ北海道でオンライン参加含む多くの方とご一緒に、化学物質過敏症(以下、CS)を正しく理解する機会を持ち、未来のために今できることを自分事として考える輪がさらに広がった、その手応えを感じています。

香害は過去最大級の
「公害」だと認識すべき

-渡辺

図1

CSは、欧米で1950年ころの学会にてランドルフ医師により初めて症例報告と提唱が行われました。コペルニクスが地動説を唱えたとき世間から嘲笑されたように、ランドルフ医師は当時、同様な体験をしたそうです。その後、啓発と理解が進み、CSは世界的に〈過去に大量の化学物質に一度暴露された後、または長期間慢性的に化学物質の暴露を受けた後、非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状〉と定義され、【図1】に示す6つが特徴です。わたしは1990年代後半よりシックハウス症候群に取り組んできました。2004年にシックハウス症候群、2009年にはCSが疾病名リストに登録され、受動喫煙防止の取り組みも進む中で、CS患者も減っていってわたしもよかったなと思っていたのですが、どういう訳か下がりきらない。むしろ、なぜかまた増加します【図2】。2010年あたりは、柔軟剤・合成洗剤・化粧品・スプレー剤・制汗剤・文房具・食品など、香料が非常に広範囲に使用され始めた時期。CS増加原因は、香料とみて間違いないでしょう。CS発症者は、香料に暴露することを避け、日常や社会生活を奪われてしまう。これは理不尽で由々しき事態だと思います。

図2

-藤井

2014年頃、わたしが経営するお店の菓子職人である夫がCSを発症しました。総合内科・アレルギー科・眼科・耳鼻科など、どこに行っても理解をしてもらえず、ひどい場合には「そんなに体調が悪くなるなら、ニオイのするところに行かなければいい」という医師もいました。ネットで、ようやくたどりついたのがCSでした。夫は、柔軟剤・合成洗剤などのニオイに強く反応を示したので、自宅の洗浄剤、従業員のユニフォームの洗濯もシャボン玉石けんに変えると夫の症状が多少治まったのです。菓子職人が欠けては菓子屋さんは成り立ちませんから、なんとか一緒に仕事をするための方法でした。

-森田

以前(友の会だより175号〈2018年9月〉)、当社製品が一助になれているとお聞きして安堵したことを覚えています。先程の基調講演で、CSを診断できる医師不足、発症者は増加傾向、根治療法がないなど渡辺先生からご報告がありました。ご家族がCSを発症され、またCS患者を雇い入れ、経営者として支えてこられた藤井代表はどのような対策をされてきたのでしょうか。

ニオイのデメリットより
無香料のメリット発信

-藤井

藤井千晶さん

確かにCS専門医を探しあてるのは難しいとは思いますが、衣食住を見直し対策することでも改善につながることを経験してきました。家族としては、夫の状態を俯瞰して見ることに心がけました。具合が悪いと(かわいそう)の気持ちが先行しますが、(何に反応したのだろうか)と一つひとつ対策を講じました。衣類の洗浄剤のほか、食では血液検査で本人の状態を正確に把握し、グルテンフリー・糖質オフ・添加物を避け栄養素を整え、住ではCSに配慮した工場を建て職場環境を変えたことも快癒につながったのではないかと思います。衣食住、暮らしの360度を並行して見直しすることが改善の一歩といえるのかもしれません。しかし、これは彼の場合です。CS患者の雇用経験から、夫と従業員の誘因は異なること、CSは個別対応が必要なことを実感し、患者側から訴える難しさも感じました。一方で、ニオイはお菓子のおいしさを左右する、無香料は品質向上につながることに気づいたんです。従業員やお客様といった患者側からよりも、経営者が無香料のメリットという経営観を発信することはとても有効ではないでしょうか。そして、それに賛同する経営者が増えれば職場や社会は変わっていくはず。そう信じて、わたしはこれからも、お菓子を通し体を考えるきっかけを創っていきたいですね。

-渡辺

藤井さんのお話にもあったように、CSの発症メカニズムが未解明なのと同様に、CSの症状は実につかみどころがない。多臓器、局所、あるいは呼吸器・消化器・循環器など強い症状などを訴える方もいれば、頭痛、不眠、集中力・注意力・意識低下というような精神・神経症状とみられる症状を訴える方もいる。最近では、ブレインフォグ(=頭の中に霧がかかったような状態)がCS発症者には現実的に起こっていることがわかってきました。これは大人だけではなく、子どもにも同様の症状がみられます。このブレインフォグは新型コロナ後遺症でも多くの方にみられ、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。こうした症状の方は、新型コロナ後遺症治療から応用できる可能性もあると期待できます。

化学物質過敏症の一般的な症状 化学物質過敏症の原因となる可能性があるもの

-森田

森田隼人

新型コロナウイルス感染後遺症治療からCS治療につながるヒントがあるかもしれないというのは、さまざまな視点からアプローチし試してみることの重要性を示唆するものだなと感じます。そしてそれには、やはりまず、多くの方にCSについて知ってもらうことが大切ですね。

-渡辺

香害は、日本人が過去経験したことのない最大級の「公害」と認識するのが正しいと思います。〈香料による健康被害の発症メカニズムが未解明〉だから規制できないのではなく、予防原則による対応が大前提です。 CSは、ごく身近な日用品、特に柔軟剤などの香料が最近の主要な誘因です。 ただしニオイではなく、あくまでも化学物質が原因です。不快な、あるいは嫌いなニオイではなく、化学物質が脳内に炎症を起こし、それがきっかけとなって反応が拡大する、それがCSです。無臭ならよい、わけではありません。ニオイを消すためには、結果、ニオイを消すための化学物質を使用することになる。それはまた、新たなCSを引き起こすことにもなりかねないのです。

-藤井

夫が重症で仕事にもかなり影響があったころの出来事として、香料入り合成洗剤のテレビCMを見て夫が「目が痛い」と言い始めたことがありました。テレビから化学物質に暴露する?ありえないことが起こってしまう。渡辺先生がおっしゃるとおり、化学物質に反応するのがCSです。ただ重度のCSともなると、化学物質にまつわる事柄、つまり、柔軟剤の絵面、ニオイなど連想との線引きが難しく混乱状態に陥っていました。こちらがいろいろと対処しても、ニオイや連想するニオイで体調をくずしてしまう。そういう状態もCSを理解する一つの例だといえるのかもしれません。

健康な体と
きれいな水を守る。

-森田

香害という言葉が示す内容を正しく啓発するため、われわれ発信者側が留意すべき点ですね。

-渡辺

渡辺一彦さん

根治治療は難しいとはいえ、藤井さんのように環境を変えれば改善する、明るい将来への希望はあるんです。個人の努力に委ねられることではなく、社会としてCS発症者をいかに受け止め、守り、大切にしていくのか。職場や学校が、一人ひとりの生活権・学習権・労働権を守る行動が大切ですから、正しい情報をさらに広く知らせること、つまり社会的啓発、規制、配慮、支援、福祉が求められます。人も自然の一部。化学物質で苦しむ人がいない、これからも皆さんの健康を支えることができればと思います。

-森田

化学物質が多用される香料入り柔軟剤を何気なく使用する。長時間持続する香料のついた衣類を、毎日、たくさんの人達が使用を繰り返し、香料が蓄積されていきます。適正量での使用を呼びかけるだけでは、目安量通りに使っていれば人の健康にも環境にも悪影響はないという誤解を招きかねません。不必要な行動をしていないだろうか?と踏みとどまるには、やはり知ることからだと改めて確認する貴重な機会となりました。〈香害・化学物質過敏症〉を、一人ひとりが〈自分事〉として捉えていただけるように、そして、無添加石けんの意義をしっかり伝え続けていきたいと思います。すべての人が健康な毎日を送ることを目指し、これからも社員一丸となって〈健康な体ときれいな水を守る。〉に徹底し行動してまいります。今後ともよろしくお願い致します。