コラム

化学物質過敏症に限らず治療で大切なのは、「治そう」という気持ちです。【東海大学 副学長 医学部長 医学博士 坂部貢さん】
2020/05/01
Natural & Simple life

化学物質過敏症に限らず
治療で大切なのは、
「治そう」という気持ちです。

坂部貢さん
坂部貢さん
微量環境化学物質の健康影響に関する研究が専門。厚生労働省や環境省における上記テーマの研究班長・研究代表者。日本臨床環境医学会元理事長をはじめ、環境医学関連の学会の理事、評議員などを務める。

前号の友の会だより184号で東海大学の坂部先生から、香害、室内環境が人間に与える影響など化学物質過敏症にまつわる情報、そして健康資本と社会資本との関係まで幅広くお話いただきました。  今回は、化学物質過敏症が発症する原因、予防策についてのお話をご紹介します。  そして誰でもできる「認知行動療法」について教えていただきましたので、ぜひご一読ください。

― 弊社では、石けんに関連して環境講演会なども開催しています。化学物質過敏症が発症したので、正しい情報を知りたいと、年々、会場に足を運んでくださる方の数が増えている気がします。

以前に比べて、メディアなどで化学物質過敏症や香害について取り上げられることが多くなりました。それで、「この症状は、ひょっとして?」と気づかれる方が増えたのではないかと思います。

― 化学物質過敏症の診断や治療されるドクターは増えていますか。

現在の医学教育では詳しく教わらない状況が続いていますので、増えることは期待ができません。シックハウス症候群については、一応、医師国家試験のガイドラインに加わりました。しかし、それも概念の説明ができることとされていて、診断治療までは要求されていないんですね。

― 先生も執筆に携われている、内科の教科書『今日の治療指針2020』。シックハウス症候群や化学物質過敏症については、総ページ数2115に対して1ページくらいです……。

化学物質過敏症はシックハウス症候群との関係が疑われています。しかし、シックハウス症候群の発生源とされる室内環境における化学物質規制のガイドラインには、いわゆる香害に関連する化学物質は含まれていません。

― 自然系の香りはいいけど人工系はよくないということも聞きます。実際はどうなんでしょうか。

実験レベルでは区別ができるんですが、人間の認知能力なんてそれほど高くないんです。結果、香りやにおいは個人の嗜好性によるところでの議論になってしまいがちです。

― だから、私共が啓発する香害が、成分というよりもにおいの好き嫌いにフォーカスされるわけですね。

前回もお話したように、においは好き嫌いが分かれやすいものなんです。嗅覚よりも、脳の認知に関わる分野に該当します。
 ある香りに対して、どう認知し、いかに記憶しているかによって化学物質過敏症の症状や反応が左右される傾向にあることも分かってきました。幼い頃に良い思い出のある香りに対しては、それほど嫌悪感はないなどです。においにまつわる認知に基づいて反応してるのか、化学物質そのものに反応してるのか、それとも両方なのか。ほとんどが両方なのですが、判断が非常に難しいところです。

― 化学物質過敏症に予防策はあるのでしょうか。

予防には一般的に、ゼロ次予防、一次予防、二次予防、三次予防という段階があります。一次予防は、健診を受けたり普段の生活習慣に気をつける、二次予防は治療を受ける、三次予防がリハビリです。ゼロ次予防とは、発生源となるものと関わらないようにし、未然に防いだり、妊娠中のお母さんが気をつけるようなことです。症状が良くなっても悪化をさせないのが三次予防。予防の段階を知って対処いただくことも大切です。

― それと、思い込みも危険だということですよね。

中には、体調不良の原因をすべて化学物質に結びつけてしまう傾向にある方がいらっしゃいます。症状が似ているため見落としている重大な病気はないか、きちんと検査を受けましょう。検査をすると、意外にも化学物資過敏症である確率は低く、脳腫瘍など他の病気を発見したことが何度もあります。

― 『カナリアからのメッセージ』では、引っ越しや職場を変えざるを得ない患者さんのお話も紹介しました。環境を変えることも必要でしょうか。

卵アレルギーの方が卵を摂取しないように、発生源から離れる、遠ざかるというのは一番効果的な治療です。
 ただ、それは一時的に必要なことだと考えていただきたいのです。  なぜならば、治療して症状が改善した、つまり二次予防に成功した段階です。その状態をキープして悪化させない、三次予防へと進みましょう。ずっと、仙人のような暮らしはできないわけですから、リハビリテーションに取り組みながら、社会復帰を目標にして生活することが大事です。

― なるほど「治そう」という気持ちが大切なんですね。

病気は治らないとか、周囲に問題があるからと矢印が外向きだと治らないものです。それは、どんな病気でも同様です。

― ドクター不足ということですが、医師による治療以外に方法はありますか。

「認知行動療法」を試してみてはいかがでしょうか(左図参照)。先程お話したように、発症のきっかけの中に認知や記憶に関わることがひそんでいる可能性があります。病気の方だけでなく、誰でもできる、ストレスコントロールにも役立つものですのでお試しください。

― では、最後に当社に期待することをお聞かせください。

御社の製品は、まさに発生源対策だと思います。安心・安全なものを利用するということはゼロ次予防で、すごく大事なことです。これからも安心・安全

★講演会や勉強会へ「カナリアからのメッセージDVD」貸出を行います。詳細は弊社お客様相談室(0120-4800-95)までお問い合わせください。

誰でもできるストレスコントロール「認知行動療法」